TRANSIT×写真家ARIKOさんのTalkshow
The Natural Shoe Store 神宮前店で行われたTRANSIT×写真家 稲岡亜里子さんのトークショー。
アメリカ西海岸でのカタログ撮影の際に感じたことや撮影のエピソードなどを伺いました。

TRANSIT(以下T):亜里子さんは過去にカリフォルニアの高校に通っていたり、現在は妹さんが住んでいたり、西海岸とのつながりも深いと伺いました。そんな土地での今回の撮影はどうでしたか?
ARIKO(以下A):TRANSITではよく撮らせていただいていますが、西海岸は自分が住んでいたこともあるし、大好きな友人もたくさん住んでいるところ。西海岸の自然はもちろん、彼らの生活や生き方をストーリーで見せられたらいいなと思い、編集長に企画を話しました。それで、こちらのカタログも連動して作らせていただくことに。知人や妹とつながりがある人などに協力してもらったので、私にとってもこれは非常に興味深い一冊となりました。
T:こちらは本誌のひと見開き目の写真ですが、今回の撮影はここを拠点に?

A:そうです。これはビッグサーという、深い山と海に囲まれた場所。サンフランシスコ(以下SF)から車で3時間くらい南下したところにあります。自然のパワーは、カリフォルニアのなかでもピカイチ!と聞いていたのですが、本当によかった。壮大な自然もそうですが、なにより食べものがおいしいんです!オーガニックレストランがたくさんあって、田舎なんだけれど若い人もたくさん住んでいて、リゾートもあるし、テントでの長期滞在もできる。今回は、親友でもあるEvaと一緒に旅しました。

T:宿泊はテントにて?
A:いいえ、荷物が多かったのでキャビンで行きました。中はマットだけ。寝袋をもち混んで寝ます。電気もトイレもない。それでも、夜は星が綺麗だし、ご飯も近くのファームなどで簡単に手に入るし、不自由どころか、手軽にキャンプ気分を味わえてよかったです。ほかにも、キッチンのついたコテージなどもあり、みんなそれぞれの旅を楽しんでいました。
T:あたたかいイメージのある西海岸ですが、夜は結構冷えると聞きました。

A:そうなんです。これは妹と妹の旦那Colinですが、独立記念日の前日だったかな。7月なのに朝晩はかなり寒かったです。太陽が出るとサマードレス一枚で問題ないですが、夜はセーターが必要なほど。だからか、みんな重ね着用の服を持ち歩いていますね。寒くなったら、ワンピースの下にパンツをはいて、カーディガンを着て、ストールをまいて…色もたくさん使って、重ね着を楽しんでいる印象でした。
T:ちなみに、彼はモデルにもなってくれた方ですよね?

A:そうなんです。シチュエーションが不思議な雰囲気だったでしょう?あれは彼のお母さんのアイディアです。お父さんもお母さんも息子がモデルになるのを大喜びして。これは、みんなが注目するなかでの照れている顔(笑)
T:彼も西海岸に住んでいるのですか?
A:そうです。妹も彼もアーティストですが、彼自身はベントラという小さな街で子供のセラピーをしています。ふたりともサーファーで、毎朝仕事前に海に入って、仕事をし、夜は夕食前にまた海へ。6時になっても陽が沈まないくらい、日が長いんです。
T:そんな生活うらやましいですね〜。趣味と仕事が自然に両立できている感じ。

A:ここでは、仕事だけではなく自然と戯れる時間を重視している人が多いです。
T:こんな風に、海辺では音楽もするんですね。

A:彼は、親友のミュージシャンのBon。彼はオーハイという街に住んでいて、彼のファミリーは、お父さんもいとこもみんなミュージシャンなんです。毎晩陽がくれると、みんな集まっては自然に演奏がはじまります。
T:赤ちゃんもギターに夢中ですね。
A:そうなんです。この子は1歳なのですが、サーフボードの上でも遊ぶし、ギターの音と手拍子に合わせて踊るし、こういうところで育つとサーファー兼ミュージシャンになるんだなぁと、納得してしまいました。
T:今回の撮影ではいろいろな出会いがあったと聞いています。なかでも印象に残っている出会いについて訊かせてください。

A:サンタクルーズにて、オーガニックファームを15年以上にわたり経営しているファミリーとの出会いが印象的でした。彼らの野菜は、サンフランシスコの有名なレストランなどでも使われ、余った食材はホールフードやファーマーズマーケットなどで売られます。今回本誌では、彼のショーンがショートストーリーを書いてくれていますが、この家族から得たインスピレーションが大きいです。この女の子は10歳ですが、私の知らないようなことまで、本当に色々なことを知っているんです。ホームスクールという、学校へ通う代わりに両親が家で教える教育システムがアメリカにはあるのですが、それを2年おきに実行していて。学校には毎日行かなくても、定期テストをパスすればOK。だから彼女は毎日、自宅での勉強とファームのお手伝いを両立させています。旬のものなどもよく理解しているし、自分の意見をハッキリ話すことができます。そんな、いままで私が出会ったことのない、素敵なファームだったんです。写真にも写っていますが、倉庫にはアーティストによるカラフルな絵が描かれ、たくさん積んである箱には、この娘のスマイリーフェイスをもとにしたブランドロゴが施されています。ほかにもオリジナルのパッケージを見せてもらいましたが、どれも本当にかわいい。

T:野菜は実際に食べてみてどうでしたか?
A:とれたての野菜をいただくって、こんなにも贅沢なものかと思いました。西海岸ではサーフィンやヒッピーなど、さまざまなムーブメントがうまれた場所ですが、オーガニックもそうなんです。最初は本当に小さい規模だったものが20年たった今、街の至るところで目にするほど、しっかり普及している。それは、アメリカ全体にも広まっていて。ここ5年ほどで、NYのスーパーもどんどんホールフードに変わりました。西海岸という場所から産まれる力って大きい。これまであまり農業に対しての関心はなかったのですが、今回は農業が身近に思え、すごく心を動かされました。
T:みなさん、ライフスタイルがカッコいい!ですね。

A:でしょう?この男性も魅力的でした。ジャック・ジョンソンと一緒にライブツアーなどをやっている方で。オレンジ畑の真ん中にポツンと建つお家に、ファミリーで暮らしています。ああいう心をあたためる音楽はこんな場から生まれるのね、と思いました。
T:作品はライフスタイルそのものですね。こちらの3人もアーティストなんですか?

A:これはサンタクルーズで撮ったものですが、3人ともベースはアーティスト。けれど、WEBデザイナーをやったり、ファイナンス系の家でできる仕事をしたり。ダンサー兼マッサージの仕事をしている方も。けれど、みんな休みの日はアトリエで描いたり、デザインをしたり、自分のものづくりをして過ごしているようでした。一つのことだけではなく、自分が興味のある色々なことをして、楽しみながら生きているのが印象的です。私も、やりたいと思ったことは生きているうちに少しでもやってみたいと思うタイプなので、彼らの生き方には同じフィーリングを感じましたね。
T:最後に、今回の撮影全体を通していかがでしたか?
A:今回は、自分の姉妹や友達など身近なシチュエーションを写真という形で発表させていただいて、新鮮でもあり、本当によい経験にもなりました。また、これまで写真の勉強をしながら長らく住んでいたこともあり、私はNYが大好きだったのですが、久しぶりに西海岸にゆっくり滞在して「ここに住みたい!」と思いましたね。NYは刺激的な反面、たくさんの情報や物事に追われ、自分のスケジュールを束縛されがちです。けれど、西海岸ではそういう価値よりも自然のなかでよい時間を過ごすことが大切に捉えられています。これからの自分にとっては、そういうスタイルの方が合うのかもしれないな、と思いました。
T:今のARIKOさんのフィーリングにぴったり合ったんでしょうね。
A:今回は、ロスアンゼルスからサンフランシスコの間のカントリーサイドを中心にまわったので、それがよかったんだと思います。現在、わたしは京都での生活をはじめたばかりですが、そういう西海岸で起こったムーブメントのようなものを、小さなことからでもいいので、京都で築いていけたらいいなぁと思っています。
