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日々を歩いてvol.4~点をうつ(小林智行)~

日々を歩いて



気付いていながら、言葉にしないまま感じ流れていく日々は、
少し捉えにくくて、彷徨いやすい。

 

出来ることは
てのひらにある

何が如何にと


動かしながら
確かめる

探しながら、省みて


動かしながら
確かめる

 

そこに生まれる
見えない実りを捉えるように
今日という日に点を打つ

夏は青、秋には黄金色に揺れる稲穂も
力を増していく小さな足も

絶え間なく打たれていく点の集合体
連なり合う点と点の集合体

 

永い時の記憶を重ねた山里で
今日も小林さんは手を動かして
今日という日に、点を打つ

出来ることは
このてのひらにある

 

 

『てのひらワークス』の屋号で「誂え靴」を製作する小林智行さん、恵子さんのwebサイトには2015年からのカレンダーが並んでいる。日付の先には、智行さんの日々の言葉が  “その日の場所”  に収まっている。

「僕は自己紹介が苦手で、その代わりになればと、日記を書くようにしています。HPもそれを意図してこうしたデザインにしてもらいました。一日の終わりに、その日を振り返って “点” を打つような感覚です。」

震災があり、家族が増え、人と巡り会いながら、新しいカタチが生まれ、方法が生まれ、生きる場所や暮らし方が変わっていく。変わりゆく環境の中で更新されていく自身の日々が、ぽつぽつとカレンダーに記録されていく。

東京で生まれ育った智行さんはかつて、モノづくりに惹かれながら、大学では経済学を専攻した。その後企業への就職も考えるが、身体にくすぶる思いに応えるように、卒業後は職業訓練校で靴製作を学ぶ道を選ぶ。無我夢中に手を動かして、なんともいえない美しさに仕上げてしまうという妻の恵子さんは、この頃からの憧れの人だった。二人は靴づくりの原点にあたる時期を共にした後、智行さんは自らの母親の歩行を支える靴を自らの手でつくりたいと、大阪にある義肢装具製作所で修行を積む。

こうして2009年、義肢装具製作の経験を生かし、BESPOKE(ビスポーク:対話から生まれるオーダーメイド)を基本とした「誂え靴」製作の場として、また、靴作りから生まれるものを伝える場として『てのひらワークス』は立ち上がった。まずは、自分達が暮らしの中で履きたい靴を、少しずつつくるところから。

 

それから11年。多くの人の足に触れ、サイズを測り、足と身体の特徴や傾向、暮らしの様子を伺いながら、不具合や違和感には手当てを。そして、その人自らが調和に向かおうとする支えになるような土台作りを目指して、靴の製作を続けてきた。素材や手法の試行錯誤を繰り返し、今では靴の木型は5種類に増え、オリジナルの既成靴も手掛けている。

育ち盛りの二人のお子さんを持つ現在は、主に智行さんが工房に立ち製作と修理を行うが、あくまでも『てのひらワークス』は恵子さんとの二人の手、そしてそこから繋がる人々の手にあると話してくれた。

恵子さんはその "てのひら" で毎日の暮らしをつくり、家族を支えている。
出逢ったころから変わらずに、細やかな心配りと繊細な感性で、無我夢中に、うつくしく。

そして繋がる "てのひら" のひとつ、ここで靴作りを学んだ菊池さんは、一年ほど前から製作の一旦を担っている。

カレンダーには、靴作りや修理の記録の合間に、岡山・吉備中央の里での日々の様子やご家族への眼差し、自身の決意や迷い、反省、そして何処かの誰かに向けた願いのような言葉が綴られる。そこでは、製作に使用する接着剤を変えることを決めた瞬間や、智行さんご自身が自らの人生の最期を想い描くような瞬間に立ち会ったりもする。小さなことのようで、かけがえのない瞬間が詰まっている。

日々の言葉に、不意に読み手も慰められたり、励まされたりして胸を打つ。
誰かに宛てながら自身に宛てたように打たれる点が、遠く離れた土地に暮らす見ず知らずの人の心に響く。

「この人のてのひらから生まれたものを使いたい」と、自然と思う。

二人からはじまり、土地や暮らし方を越えてひろがる無数の “てのひら” と
そこから生まれる無数の “ワークス” がこれからもそれぞれの点を打つ。

更新されていく新たな展開と、どれだけカレンダーをめくっても変わらないもの。

変わらないものほど見えにくくなかなか言葉には仕切れない。
ただ滔々とその人の佇まいに、暮らしの中に、生み出すものの中に流れている。

春を迎え、苗は芽を出し背を伸ばす。
点を打ちながら、空へと一心に背を伸ばす。

(2019年3月)

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てのひらワークス
http://tenohira.noor.jp/

『てのひらワークス』の製作する靴の一部は、2019年4月20日(土)よりナチュラルシューストア神宮前店にてお取り扱い致します。

4月20日(土)は小林智行さんに店頭にご滞在頂き「製作デモンストレーション」を行って頂きます。
普段は岡山に暮らす小林さんにお会いできる貴重な機会ですので、是非お気軽にお立ち寄りください
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『てのひらワークス製作デモンストレーション
一枚の革から一足の靴ができるまで


日 時:2019年4月20日(土) 13:00~16:00
場 所:ナチュラルシューストア神宮前店
*詳細はこちらをご覧ください。
 www.thenaturalshoestore.jp/news/tenohira201904/
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また、6月15日(土)、16日(日)には東京千駄ヶ谷にて、サンダルをつくるワークショップも開催予定です。
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『てのひらワークス』ワークショップ
~靴づくりのはじめの一歩「自分のサンダルをつくってみる」~
日 時:① 2019年6月15日(土)11:00-16:00
    ② 2019年6月16日(日)11:00-16:00
場 所:東京都渋谷区千駄ヶ谷5-1-11 IVY WORKS M2F
*詳細はこちらをご覧ください。
 www.thenaturalshoestore.jp/journal/tenohira_ws201906/
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