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急に書きたくなった手紙「ほんとうの手紙」

2020.10.31

こんにちは。
お元気ですか?


ふと気づけば
柿の実はすっかり朱く熟れ、
夜の空気がひやり、と冷たくなっていました。


今年はなんだかずいぶんと慌ただしく
秋がやってきたような気がします。



わたくしは、と言えば

春先から続いてる「あたらしい生活」に
慣れないような、
慣れたような、

でもやはり慣れないような、


そんなふうな毎日でしたが、


先日
ほんとうに久しぶりに

国分寺の「胡桃堂喫茶店」に立ち寄ったときに、


すうっと霧が晴れ
呼吸が整ったような気がしたのでした。




喫茶店にもかかわらず
お店のあちこちに本がぎっしり詰まった書棚がある胡桃堂喫茶店は、

「胡桃堂書店」でもあります。



なかでも2階にあるガラスの入ったおおきな書棚が
わたくしはとても好きなのですが、


ここには
実家に置いてきたままの懐かしい愛読書や
それらにつながる本たちが、

なぜかいつも並んでいるのです。




その日も2階にとおしてもらったわたくしは
コーヒーを待つあいだに件の書棚をのぞき込みました。


そのとき唐突に
実家に置いたままだった1冊の本のことを思い出したのです。



それは宮沢賢治が身近な人たちに宛てた手紙をまとめた本で、


もう15年近く前に
およそそのような類いの本を扱っているとは思えないスーパーのなかの書店にて
ほとんど偶然的に入手したものでした。


急に思い出されたその本とその本にあった言葉は

あたたかなコーヒーと胡桃入りのケーキともにお腹に落ち

じんわりからだを温めてくれたようでした。



呼吸が整うようだったのは


誰かが淹れてくれたコーヒー
他者のいる静かな時間
懐かしい気配のする書棚
忘れていたことば


気づかぬうちに必要としていたものが
揃ったからかもしれません。




後日、実家から件の本を寄せましたので
思い出された部分を
一部記したいと思います。


いつか
必要なときがきたら、

ふと思い出すひとつのことばとなれば、と。


(亡くなる10日前に教え子に送った手紙より)

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……

風のなかを自由に歩けるとか、
はっきりした声で
何時間も話ができるとか、
自分の兄弟のために
何円か手伝えるとかいうようなことは
できないものから見れば神の業にも均しいものです。


そんなことはもう
人間の権利だなどというような考では、
本気に観察した世界の実際と余り遠いものです。



宮沢賢治『あたまの底のさびしい歌』
港の人 発行

————————————


震災から1年後
盛岡の光原社*の可否館で

あたたかなコーヒーとともにお腹に染ませたのが
やはり
胡桃のぎっしり詰まったクッキーだったことを思い出しています。



いよいよ寒くなりますから
無理をせず
どうぞお身体ご自愛ください。


お店でお会いできるのを楽しみにしております。


また書きます。


かしこ


y.t.


*光原社=「注文の多い料理店」を出版。社名は宮沢賢治が名付けた。



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